結合線路のインピーダンス

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概要

想定する線路モデル

下の図のように2つの伝送線路が相互インダクタンス$L_\mathrm{m}$と相互キャパシタンス$-C_\mathrm{m}$によって結合されているモデルを考えます. 式の対称性をよくして後で気持ち良くなれるように相互キャパシタンスを$-C_\mathrm{m}$,線路の単位長さあたりのキャパシタンスを$C+C_\mathrm{m}$と置いていますが$C_\mathrm{m}\leq0$であり実際の相互キャパシタンス$-C_\mathrm{m}$は正の値となります. また実際の線路では抵抗や漏れコンダクタンスによる損失が生じますがここでは簡単のため無損失線路の場合について考えます.

電信方程式と特性インピーダンス

この回路の微小区間$\Delta x$における上側の伝送線路の電圧,電流に注目すると以下の回路方程式が成り立ちます. \begin{eqnarray*} v_1(x) - v_1(x+\Delta x) &= L\Delta x\frac{\mathrm{d}i_1}{\mathrm{d}t} + L_\mathrm{m}\Delta x\frac{\mathrm{d}i_2}{\mathrm{d}t}\\ i_1(x) - i_1(x+\Delta x) &= (C+C\mathrm{m})\Delta x\frac{\mathrm{d}v_1}{\mathrm{d}t} - C_\mathrm{m}\Delta x\frac{\mathrm{d}(v_1-v_2)}{\mathrm{d}t}\\ &= C\Delta x\frac{\mathrm{d}v_1}{\mathrm{d}t} + C_\mathrm{m}\Delta x\frac{\mathrm{d}v_2}{\mathrm{d}t} \end{eqnarray*} これらの式において$\Delta x\to 0$の極限を取ると \begin{eqnarray*} - \frac{\mathrm{d}v_1}{\mathrm{d}x} &= L\frac{\mathrm{d}i_1}{\mathrm{d}t} + L_\mathrm{m}\frac{\mathrm{d}i_2}{\mathrm{d}t}\\ -\frac{\mathrm{d}i_1}{\mathrm{d}x} &= C\frac{\mathrm{d}v_1}{\mathrm{d}t} + C_\mathrm{m}\frac{\mathrm{d}v_2}{\mathrm{d}t} \end{eqnarray*} という偏微分方程式(電信方程式)が得られます. 電信方程式の解についてはここでは割愛しますが,通常の伝送線路の場合と同様にこの方程式の各係数から結合線路の特性インピーダンスを求めることができます. 単一の伝送線路であれば線路の特性インピーダンスは \[Z_0 = \sqrt{\frac{L}{C}}\] となりますが結合線路の場合,2線を流れる信号が同相(コモンモード,偶モード)の場合と逆相(ディファレンシャルモード,奇モード)の2つの場合を考える必要があります.

2つの線路を流れる信号が同相,すなわち$v_1=v_2$,$i_1=i_2$となっているときは \[ Z_\mathrm{e} = \sqrt{\frac{L+L_\mathrm{m}}{C+C_\mathrm{m}}} = \sqrt{\frac{L+L_\mathrm{m}}{C-|C_\mathrm{m}|}}\] 逆相,すなわち$v_1=-v_2$,$i_1=-i_2$となっているときは \[ Z_\mathrm{o} = \sqrt{\frac{L-L_\mathrm{m}}{C-C_\mathrm{m}}} = \sqrt{\frac{L+L_\mathrm{m}}{C+|C_\mathrm{m}|}}\] となります. したがって偶モードインピーダンス$Z_\mathrm{e}$と奇モードインピーダンス$Z_\mathrm{o}$の間には$Z_\mathrm{e} > Z_\mathrm{o}$の関係が成り立ちます.

特性インピーダンスと結合係数

$Z_0 = \sqrt{\frac{L}{C}}$より \begin{eqnarray*} Z_\mathrm{e} &= Z_0\sqrt{\frac{1+L_\mathrm{m}/L}{1-|C_\mathrm{m}|/C}}\\ Z_\mathrm{o} &= Z_0\sqrt{\frac{1-L_\mathrm{m}/L}{1+|C_\mathrm{m}|/C}} \end{eqnarray*} が成り立ちます. ここで$L_\mathrm{m}/L = |C_\mathrm{m}|/C$は2つの線路の結合度です. 結合度はよく$C = -20\log\frac{L_\mathrm{m}}{L}$ [dB]として対数で表現されています(キャパシタの$C$と被って紛らわしい).

計算する奴

結合度と特性インピーダンスから偶奇モードのインピーダンスを求めます(逆もしかり).

結合度 $C$ [dB] 偶モードインピーダンス $Z_\mathrm{e}$ [$\Omega$]
特性インピーダンス $Z_0$ [$\Omega$] 奇モードインピーダンス $Z_\mathrm{o}$ [$\Omega$]

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