7 MHz CWトランシーバー

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1 概要

7 MHz帯QRPp CWトランシーバーです. JARDの保証認定を取って無線局免許を取得しています.

今回作成した基板は BOOTHで頒布しています. あまり数は無いですが作ってみたいと思った方はもし良かったら見てみてください.

2 無線機の構成

VFOとしてSi5351aを利用しています. この石は同時に3系統の矩形波を出力することができます. 今回はそのうちCLK0とCLK1の2出力を利用しCLK1からは送信周波数の信号を,CLK0からは受信用にCLK1に対して800 Hz低い信号を出力しています. 今回受信部はダイレクトコンバージョン方式としたためこの周波数の差である800 Hzが受信信号のサイドトーンとなります.

block.png

また,送受信でのアンテナ共用のために受信部の前にダイオードを利用したスイッチを入れています. アンテナから受信した信号は信号レベルがダイオードの立ち上がり以下のためLC共振回路を通って受信回路に入力されますが信号レベルの強い送信信号はダイオードによってクリップされるため受信部に入ることはありません.

sw.png

2.1 受信部

今回,受信部には単純なダイレクトコンバージョン方式を用いました. 受信用の局発は送信周波数に対して800 Hz低く設定しているためいため受信した信号と局発の信号を乗算することで \[\sin(2\pi ft)\sin(2\pi(f-800)t) = \frac{1}{2}(\cos(2\pi*800 t) - cos(2\pi(2f-800)t)\] という2つの周波数の信号が得られます.したがってLPFを用いて低域側の信号のみを取り出すことで受信信号から800 Hzのサイドトーンを得ることができます. このような処理を行うための乗算器として通常はDBM(Double Balanced Mixer)などがよく用いられますが今回は局発の出力が方形波ということもあり,アナログスイッチである74HC4066を用いています. 正弦波を掛けるのではなく方形波で切り刻むのだと先程の式と状況が変わってしまいそうですが実は方形波は基本波とその奇数時の高調波の合成波形と考えられるので特に問題ありません(高調波は後ろのLPFで消えるので).

ということで受信部の動作はこんな感じです.

2.2 送信部

送信部にはBF256と2SC1815を用いており,出力はおよそ30 mWとなっています. 変調(キーイング)はBF256で行っています.電鍵の直結では無くマイコンを経由しているためスクイズ動作などに対応し,快適なオペレーションが実現できます. また終段として2SC1815を用いていますがこれは家の部品箱にたまたまあった在庫を利用しているだけなので実際はもっと他の石を用いたほうが良いと思います.

3 製作

3.1 プロトタイプの作成

まずはブレッドボード上に組み上げて実験しました.

brd.JPG

Si5351aは矩形波発振なのでスペアナで出力を見るとこのように高調波がビンビンに出ていることが確認できます.

harm.png

さすがにこれでは免許が下りないのでいい感じのLPFを作ることにしました.

3.2 LPFの設計・製作

今回は集中LCを用いた3次バタワースフィルタを設計しました(簡単なので). 詳しい話は別の機会に書こうと思いますがこのフィルタを構成する各素子値はL:C:Lを1:2:1にしてあとはカットオフ周波数やインピーダンスでスケーリングすることで求まります. ということで完成したものがこちら.

lpf.jpg

me.jpg

製作したフィルタの特性の理論値と実測値は次のようになります. お家で簡単にフィルタの特性が測れる良い時代になったものです.一家に一台NanoVNAがあるとこういうときに便利ですね.

lpf.png

3.3 基板製作

プロトタイプがいい感じに動きせっかくなので基板を起こしました. だいたいクレジットカード大くらいでいい感じに収まったので無料クーポンを配っていたALLPCBに投げます. World's Fastestと謳うだけあって1週間程度で自宅に届きました.

pcb.jpg

また家にいい感じのケースがあったので組み込んでみました. 基板を起こしてケースに入れるとかなりそれっぽく見えます(見えるだけ…).

case.jpg

4 免許取得

自作した無線機で電波を出すためには電波法に則って無線局免許を取得する必要があります. 無線局免許を取得するためには使用する無線設備がきちんと法令の基準を満たしていることをなんらかの手段で示す必要がありますがアマチュア局の場合は保証認定という制度を用いることが一般的です. 2021年8月現在,日本で保証認定を行っている機関は2箇所(JARD, TSS)あります.今回はJARDに保証をお願いしました.

手続の流れとしてはまず免許申請データを揃えてJARD(もしくはTSS)に保証の申請を行い,無事保証が下りたら発行された保証書を添えて総務省に免許申請を行います. 参考までに免許手続にかかった日数を書いておきます(あくまで私のケースです)

  • 2021/8/5 : JARDに保証認定申請,手数料振り込み
  • 2021/8/18 : JARDから問い合わせのメール,同日中に回答
  • 2021/8/26 : 保証が下りる,総務省に免許申請
  • 2021/9/22 : 免許の審査完了
  • 2021/9/29 : 新しい免許状が届く

他の方の体験談などを見てもこのように大体1ヶ月半くらいかかるケースが多いように思います. 免許が下りれば実際に電波を出して他の無線局と交信を行うことができます.

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